2022年の東京ゲームショーでsteam版リメイクが発表された『ruina-廃都の物語-』について、原点であるフリーゲーム版の魅力を徹底的に紹介します。

伝説のフリーゲームが令和に復活

今年の9月、東京ゲームショウ2022にて、たいへん嬉しいニュースが飛び込んできた。

https://dengekionline.com/articles/149525/

「なんと、あのruinaが！？」と、驚いた人は多かったはずだ。「ゲームブック風」という、シンプルながら非常に奥深く心躍るシステムや、数多の神話やサブカルを下敷きにしたシナリオ・キャラクター造形は多くのプレイヤーを魅了したものだ。それが

グラフィックやUIの強化どころか、追加シナリオまで導入して復活する

だって！そんなんめっちゃうれしいやん！

ということで、ここではリメイク版が発売される前に、その原点となったフリーゲーム版ruinaの魅力を余す所なくお伝えしたい。あわよくばぜひプレイして欲しい。なんといっても、これはPCさえあれば遊べる「フリーゲーム」なのだ。

物語を選択する”ゲームブック風”RPG

Ruinaは2008年に公開されたフリーゲームで、一言で言えば

だ。といっても、現代の令和っ子には「ゲームブック」がピンと来ない方も多いかもしれない。

ゲームブックというのは、ゲームのシステム部分を、PCではなく人間が代替できるように書かれた本のこと。子供の頃に「にゃんたんのゲームブック」などで遊んだことはないだろうか？

「前方に敵がいる！不意打ちして戦うならP.10へ、見つからないように逃げるならP.20へ……」

といった具合に、本を読みながら物語の展開を自分自身で選んでいくことが出来る、いわば遊べる本のことだ。

ruinaはPCでプレイするゲームでありながら、その「ゲームブック風」のシステムを強く志向しており、それがこのゲームをプレイする時の面白さとして遺憾なく発揮されているのみならず、「RPGの面白さ」を考える時の大きなヒントにもなっている……と、だいぶ風呂敷を広げてしまったが、筆者はそのように考えたりもする。

緻密な世界観を構築する膨大な物語

義務的な作業を省きつつゲームとしての面白さを追求した育成バランス

、そして最も重要なこととして、

プレイヤーに冒険の喜びを味あわせてくれること

TRPG風の世界観と、濃厚なテキスト描写

ruinaの世界観を考えるときに切っても切り離せないのが、TRPG（テーブルトークRPG）からの影響だ。どういうことかと言うと、

たとえばruinaはRPGではあるのだが、マップ上でキャラクターを操作するといったような動作が発生しない。プレイ画面はキャラクターを操ってフィールド上を自由に歩き回るようなものではなく、ゲームは

一枚の地図の上を探索するようにして

進んでいく。未探索の場所は地図上には記載されず、白い空白地として表示される。

美麗なグラフィックの3Dモデルや、作り込まれたフィールドが登場する代わりに、ruinaの世界観を作り上げているのは随所で差し込まれる重厚なイラストと精緻なテキストで、これらはプレイヤーの前に濃密な世界の空気を立ち上らせてくれる。

テキスト量はノベルゲームでもプレイしているのかと思えるほどの膨大

であり、読み進めるうちにプレイヤーは否応なしに世界に没入させられてしまうだろう。

シナリオに関して言うと、プレイ中に直接触れている触れている物語以上に、より膨大な歴史を感じられるのもruinaの大きな魅力の一つだ。ネタバレを避けるために詳しくは語らないが、ruinaの物語はまさに神話と伝説の世界であり、多くの現実世界の神話などが物語の下敷きとなっている（知っていればニヤリとできるだろう）。

迷宮に隠された秘密や、隆盛を誇った大帝国のおどろおどろしい末路、すべての背後に存在する何者かの存在……

とにかく、語り始めてしまうときりがないのだが、散りばめられたテキストの背後から練り込まれた設定が浮かび上がってくるさまは、まさに圧巻の一語に尽きる。

レベル上げ作業は不要！冒険こそが経験だ！

RPGというゲームジャンルにとって最大の敵は、

だと筆者は考えている。その代表格とも言えるのが面倒なレベル上げ作業で、Ruinaはこの問題を「ゲームブック風」のシステムによって見事に解決している。

結論から言うと、このゲームにはレベル上げ戦闘のような概念はほとんど存在しない。プレイヤーは

イベント内での選択や、あるいは財宝の入手などによる、冒険の活躍によって経験値を得られる仕組み

そのイベントも、ただシナリオを読んでいけばよいのでなく、

随所でプレイヤーは何らかの選択を迫られ、それによってその後の展開は多様に変化していく

これは立体的なマップを廃し、常に何かしらのイベントが発生するゲームブック風のシステムを取り入れた結果であり、イベント内で発生しうる戦闘の大部分も、なんと

ボス戦を除けば多くは回避可能

なのだ。まあ、報酬がおいしかったりするので結局戦闘を選ぶことも多いのだが……

また、冒険によって得られるのは経験値だけでなく、SPと呼ばれる

ジョブチェンジに必要なポイント

も入手できる。ジョブによる育成は非常に自由度が高いものの、こちらは非常に貴重、かつ後述する基本

の習得にも関わってくるため、プレイヤーを大いに悩ませるポイントにもなっている。

個性あふれる仲間のスキルを駆使して迷宮を探索せよ

プレイヤーは主人公について複数の生い立ちを選ぶことができ、それによって主人公の能力やスキル、シナリオも変化する。Ruinaでは戦闘に関するステータスとは別に、

というものがあり、こちらもゲームの重要な要素の一つだ。

例えば、危険察知のスキルを持っていれば土砂崩れや、敵の待ち伏せを事前に回避できたり、古代知識のスキルがあれば、迷宮の随所に点在する古代の碑文を解読できたりもする。

特定のスキルがなければ入ることができない場所もあるが、そのかわり

問いに対しては常に複数の回答

が用意されていることも多く、「全然進めないじゃんか！」といったストレスになりづらい。たとえば鍵開けスキルがなくて開けられない扉を、力技でこじ開けたりすることもできるのだ。（そしてその場合は何らかのデメリットが併発することもある）

そして解き明かすべき謎が難しいければ、予想外の解決方法を見つけたときの喜びもひとしおだ。たとえば、作中のあるボスは「人の手で殺されることはない」と予言されているボスがいて、普通にプレイすれば、ある仲間を連れていけばいいだけなのだが……おっと、これ以上はやめておこう（ニヤリ）。

ただし、そうした探索に必要な技能をすべてを主人公だけでカバーしきることは難しいため、不足している部分は仲間の力で補う必要がある。Ruinaには10人+αの仲間がおり、誰を連れていくかによって、探索できる範囲内だけでなく、

ダンジョン内でのイベントも変化する

そのためお気に入りのキャラを見つけてたら、ひたすら連れ歩いてみても良いだろう。イベントによっては意外な一面を見せてくれることもある。

筆者のお気に入りは弓使いのキレハで、尖った物言いながらもなんだかんだ手助けしてくれるツンデレタイプ。

特に終盤に発生する彼女の専用イベントは一見の価値アリ

で、これを見るために紙耐久の彼女を抱えて苦労しながら探索をしたのも良い思い出だ。（プレイするなら本当に見たほうがいいよ）

これまで、ruinaの評価点をざっと上げてきたが、もちろん悪い点がないわけではない。RPGツクールを使用して作られたこともあって、画像は荒いし、直感的なわかりやすさを重視するプレイヤーにとっては、重厚なテキストも単なる雑音かもしれない。何よりグラフィックはかなり地味だ。

ただそれでも、Ruinaが優れたゲームではあることは揺るがない。ゲームブックをもとにしたシステムは独創的だし、作中で「大河神話」と呼ばれる神話体系をまるまる作り上げた世界観も素晴らしい。ここまで読んで少しでも気になる点があったプレイヤーは、ぜひダウンロードして遊んでみて欲しい。ruinaは非常に濃密なゲーム体験を与えてくれるであろうことをお約束する。

もちろん、君はフリーゲーム版のruinaを遊ぶことも出来るし、そうせずにリメイク版を待つことも出来る。そうした選択の連続こそがまさにゲーム的で、ぜひそうした物語を選択する喜びを、最後まで読んでいただいた方にもお届けできればと思う。

ダウンロードリンク【ふりーむ！】（外部サイト）

ruina公式サイト（外部サイト）

今よみがえる『廃都の物語』-伝説のフリーゲームを体験せよ！-