元になったWiiのスカイウォードソードは2011年に発売されたタイトル。
オートセーブが可能になったりと一部の変更点はあるものの追加要素は特になく、ほぼ画質を良くしただけのリマスター版である。
ゆえに遊んでみると"昔のゲーム"を感じる場面が度々あり、ボタン操作対応である程度改善されたとはいえまだまだクセの強い操作性も相まって、2017年に発売された同シリーズのメガヒット作「ブレスオブザワイルド」と比較すると万人受けには及ばないだろう。
しかし個人的に好きなのはスカイウォードソード。
相棒キャラであるファイの活躍ぶりやフックショットのようなアイテムも登場することから、64の名作「時のオカリナ」「ムジュラの仮面」に近い雰囲気を感じたので、これらが好きだった方におすすめしたい。
当作はサブキャラクターたちの個性が際立っている。
代表的なのが、サブキャラというよりボスキャラだがギラヒムダンスでおなじみのギラヒム様。
これまでの作品ではお姫様だったゼルダが、当作では幼馴染の女の子という設定も熱い。
騎士学校のガキ大将で、序盤ではリンクをいじめていたバドというキャラがいるが、中盤で改心し、終盤では協力してボスを倒したりと頼もしい味方になってくれたりする。
「ブレスオブザワイルド」と比較すると、リンク自身の表情が豊かな点も親しみやすくかわいい。
当作の拠点となるスカイロフトの人々も面白い。
現実世界にもいそうなキャラや、どこかで見たようなサブイベントの展開についついニヤリとさせられる。
夜間のアルバイトで稼いだお金を、怠け癖のある母親にムダづかいされることに頭を痛めている少年キコア。
騎士学校の先輩クラネにピュアな恋心を寄せている、バドの子分であるラス。
自称元アイドル?だった父親そっくりの、リンクに恋する預かり屋のマドンナ・ジャクリーヌ。
ちょっとヒステリックな古美術コレクターの母親と共に暮らし、お店では営業スマイル全開、自宅では無愛想な道具屋の男性。
などなど。
シリーズおなじみのテリーも登場する。
しかしキャラクターが魅力的だっただけに、サブイベントの少なさにはがっかりしてしまった。
ひとつひとつの内容は濃いが、もう少し数が欲しかったところ。
HD版で追加イベントを期待していたがひとつもナシ。
あまりにも悲しかった。
高画質になったコブーのイベントにはたいへん癒されたが。
ボス戦の面白さは非常にマル。
「ブレスオブザワイルド」のボス戦は自由度が高いゆえのつまらなさを感じてしまったが、当作のボスたちはどれも攻略法がある程度定まっており、それを模索する、あるいはわかっていても実現するのが難しい(=PS次第)のでやりごたえを感じる。
倒し方のセオリーが定まってはいるものの、ボスによっては意外な武器が効果を発揮したり、裏技のような時短クリア法もあったりで奥深さがある。
個人的には中盤のダイダゴス戦が楽しく、タイムアタックも何度か挑戦するなどした。戦闘前の演出も好み。
ダイダゴス戦が気に入っているだけに、エリアではラネール砂海が最も印象に残っている。
特に、砂の海の時を戻して航海する場面はエモさを感じた。
「ムジュラの仮面」でもロックビルの神殿の天地を反転させるという発想に舌を巻いたものだが、ゼルダの砂漠ステージは当たり率が高いのだろうか。
当作は、64時代の「ちょっと不気味だけど古き良きゼルダ」を求めるプレイヤーにはきっと刺さることだろう。
子どもでも遊びやすいであろうキャラデザで、怖さはだいぶマイルドになってはいるが。
古の大石窟の終盤、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のオマージュと思われる展開では、このくされボコブリンたちはもし「時のオカリナ」なら間違いなくリーデットだっただろうな……と想像したら恐怖で震えた。