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1997年1月、FINAL FANTASY Ⅶが発売。間違いなく、ゲーム業界にとって新たな時代の幕開けであった。すごいゲームがどんどん出るぞ…！当時のユーザーはそんな不確定な、しかし確信にも似た願いとともに、コントローラーとお小遣いを握りしめた。対してこちらは分水嶺。このクオリティに続かねばならないクリエイターたちが熱意を抱いたか、あるいは冷えた頭を抱えたかはわからないけれど。計り知れない衝撃とは、むしろ業界こそを貫くものである。そんな激動の鐘がかき鳴らされたこの年の10月、今作、moonもまた産声を鳴らした。ジャンルはリミックスRPGアドベンチャーゲーム。そしてテーマは “アンチRPG” 。RPGという偉大なビッグコンテンツのアンチを名乗ったあげく、リミックス＝新たな再構築まで成すというのだ。後世にまで続く、名だたる傑作RPGが多数産まれた群雄割拠の時代になんたる不遜なテーマであろう。たしかにこのゲームにRPG的な戦闘は無い。主人公の目的は “ラブ” を得ること。自由にたくさん歩き、ゆったりとした美しい世界と出会い、不思議で優しい人たちと出会う。さらにたくさん歩けば、少し不気味で謎な世界を知り、悩みや秘密を抱えた人たちの真実を知る。「それもラブ。これもラブ。」とは作中のセリフであるが、 “ラブ” もまたこの作品の大切なテーマのひとつなのだ。この小さな世界に隠された色んなテーマを紐解き冒険に繋げることこそが、本作の一番の魅力だと思う。そしてRPGの否定どころか、このゲームこそがまさしくロールプレイングゲームそのものなのだ。…しかしここは推薦の場。これ以上の語りはネタバレである。とてももどかしい。だから想いを馳せよう。クレイアニメのような暖かい雰囲気の、ただ歩くだけが退屈にならない工夫も凝らした、優しくて変なヤツらで大好きなキャラクターたちのいる、でも油断ならないmoonワールドへ。ご静聴、ありがとうございました。ほんの一瞬でもご興味につながりましたら幸いです。問おう。勇者とは、罪なるか。

石ころ