冥賀小夜日さんに教えたいのはドンクベット！これは心に刺さるはず！見てみてください！

　本記事ではポーカーチェイスにおいてドンクベットを採用するために、ドンクベットの集合分析結果を基に、機械学習の手法によりヒューリスティックの構築を試みる。

　一般にドンクベットは初心者が避けるべき戦略であると説明されるが、他方でNLHEに慣れたプレイヤー同士の戦いでは有益な戦略となりうるのも事実である。しかしながらドンクベットが有効なボードの分類は極めて難しく、例えばBTN vs BB SRP 8h6s2dのドンク頻度は1%しかないが、よく似た8h6s5hでのドンク頻度は42%もある。「ストレートがナッツになるボードはドンク頻度が高い」と説明されることもあるが、例えば8h7s4hはストレートがナッツであるがドンク頻度は9%しかない。また、UTG vs BBとBTN vs BBではドンク戦略は極端に異なるものとなる。例えばUTG vs BBではドンク頻度100%のボードさえ存在するが、BTN vs BBではドンク頻度は最大でも60%程度である。さらには8s8h5dはBTN vs BBではドンク頻度ほぼ0%なのに対しUTG vs BBではドンク頻度73%となる。これらの理由から、ドンクベットの集合分析においては単なる固定ポジション同士の解析のみならず、オリジナルのポジションの違いによる戦略の変化の解析も極めて重要となる。

　この問題に対し、本記事では機械学習による分類及びヒューリスティック構築を試みた。具体的には、K-means++による平均的な戦略のラベル付けを行い、それに対して決定木によりヒューリスティックを構築した。K-means++は平均値を基にクラスタリングを行うアルゴリズムであり、平均的な戦略をつかみたいというNLHEの目的意識と相性が良い。また決定木による分類は説明性が極めて高く、実戦で単純高速かつ高精度で戦略を把握したいという目的と合致する。K-means++および決定木にはそれぞれ外れ値に弱い、過学習しやすいという弱点がよく知られているが、ベット頻度を説明変数と取れば極端な外れ値が出ることはなく、また本記事は未知のボードに対する予測が目的ではなく既知のボードの分類が目的であるため過学習は問題とならない。これらの理由から本記事ではK-means++および決定木を用いて分析を行った。

　本記事では集合分析にあたりプリフロップの想定レンジは6max cash game eff. 100BBのものを用いた。ポーカーチェイスのランクマッチはanteありのSNGであり、プリフロップのレンジはcash gameより広がるように考えられるが、他方で獲得ポイントの仕様から極めて大きなBubble Factorの影響を受け、3bet/4betを恐れてプリフロップのレンジは狭くなるとも考えられる。本記事ではこの2つの影響を鑑みて差し引きcash gameと類似のプリフロップレンジになるものと仮定した。

　BTN vs BB（横軸）およびUTG vs BB（縦軸）のボードごとのドンクベット頻度を図示したものが下図である。図より、以下のことが

ドンクベット頻度の散布図

・よく知られた事実であるが、多くのボードでドンク頻度は低い

・概ねvs BTNよりもvs UTGの方がドンク頻度は高くなる

・vs BTNとvs UTGで戦略が近しいボードは稀である

2つ目および3つ目の事実から、本記事では機械学習に用いる説明変数として「vs BTNのベット頻度」「vs UTGのベット頻度とvs BTNのベット頻度の差」の2つを用いるのが適切であると考えた。これによりvs UTGとvs BTNの戦略の違いがより明確になると考えられる。下図はvs BTNのベット頻度を横軸、ベット頻度差を縦軸として表示しなおしたものである。図より例えばvs UTGの方がベット頻度が40%以上高いボードが数多く存在することが読み取れる。

ドンクベット頻度の散布図。右に行くほどvs BTNでのベット頻度が高く、上に行くほどvs UTGの時のベットのインセンティブが高い

　さて、一般にTハイ以上のボードやモノトーンボードではドンク頻度が極めて低いとされている。実際、それらのボードではvs UTGでもvs BTNでもドンク頻度が低い。従ってデータ前処理としてこれらのボードを除外し、9ハイ以下のレインボー/ツートーンボードのみを分析対象とした。

　下図がクラスター数4としK-means++により分類した結果である。

K-means++による分類（クラスター数4）

各クラスターは例えば次のように解釈できるであろう。

藍：積極的にドンクを打ちたいボード

緑：vs UTGの時だけ積極的にドンクを打ちたいボード

空：vs UTGの時だけドンクを検討したいボード

橙：vs UTGでもvs BTNでもドンクを打たないボード

また、下図はこの結果をもとにして決定木学習を行った結果である。用いた説明変数は「トップカード」「ミドルカード」「ボトムカード」「レインボーかツートーンか」「ペアがあるか」「ナッツがストレートか」の6種類である。詳しい読者のために注意しておくと、本図では左をTrue/右をFalseとするために、一部ラベル名のbooleanをあえて反転させている。

決定木学習結果（クラスター数4）

本分析結果から、次のことが分かった。

ハイカードが9以下でモノトーンでないとき、次のように判断する。

・4以下のペアボードでは打たない

・ミドルカードが5以下のストレートのあるボードでは打つ

・それ以外のボードでは、vs BTNのときは打たない

　・ストレートがあれば積極的に打つ

　・ミドルカードが5以上のレインボーボードでは積極的に打つ

　・それ以外のボードでもドンクを検討してよい

例えば冒頭に挙げたいくつかのボードについて考えると

8h6s2d：ミドルカードが6以上のレインボーボードなので、vs UTGのときはドンクを積極的に打つ。vs BTNの時は打たない。（ドンク頻度はvs UTG 63%/vs BTN 1%）

8h6s5h：ストレートがあるのでvs UTGでは積極的に打つ。ミドルカードが6以上なのでvs BTNでは打たない。（ドンク頻度はvs UTG 83%/vs BTN 42%。本ボードは例外的にvs BTNでもドンク頻度が高い）

8h7s4h：ストレートがあるのでvs UTGでは積極的に打つ。ミドルカードが6以上なのでvs BTNでは打たない（ドンク頻度はvs UTG 56%/vs BTN 9%）

8s8h5d：ミドルカードが6以上のレインボーボードなのでvs UTGでは積極的に打つ。vs BTNでは打たない（ドンク頻度はvs UTG 73%/vs BTN 0%）

　本記事ではこれ以上の分析を省略するが、さらに詳細に分析したい読者のために、クラスター数6としてK-means++により分類した結果を示す。

K-means++による分類（クラスター数6）

 各セントロイドが示す平均戦略は以下の通りである。

 決定木学習結果は下図の通りである。

決定木学習結果（クラスター数6）

　分析結果を基に、本記事では以下のようなヒューリスティックを提案する。

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すごくいい記事ですね、参考になりました！！
後学のためにお聞きしたいんですが、各ボードの戦略はどこから取ってきているんですか？